サイトナの作文れんしゅう

毒にも薬にもならないようなことをつらつらと書いたエッセイのようなものです。

寒い日の夢と魔法の王国レポート

ディズニーランドは夢と魔法の王国らしい。テレビでもそう言っているし、いろんなポスターやパンフレットにもそう書いてある。近所にいる猫もそう言ってた。
テレビのコマーシャルにはいつでも瞳を輝かせた子供が登場し、その子供を温かく見つめる親が現れる。ミッキーマウスの耳当てをつけた女子高生たちが笑顔でみんなでジャンプする。ディズニーランドに行けば、みんなそんな風になれるのですよ、と、そういうことを言っているのだと思う。

それならばと、寒い日に、はたしてディズニーランドに夢はあふれているのか、家族はコマーシャルのように温かい雰囲気でまわっているのか、ということを見に行ってきた。いやらしいね。
ちなみに、おれはディズニーが特別好きな人というより、ディズニー好きな人と行くディズニーが楽しい人、とそういう位置づけです。好きなキャラクターはムーミンリラックマとみんなのたー坊とかです。みんなのたー坊、あなたは知ってますか。

まわった日は12月の第2週の土曜日で、天気は雨、最低気温6度、最高気温10度、波の高さ0.5メートル、といった気象条件だ。波の高さはあまり関係ないか。なかなかに寒く、しかも雨だ。こんな状況下で、はたして夢と魔法はかかっているのか。

午後1時くらいにディズニーランドに着いた。
人が少ない。いくら寒いとはいえ土曜日は土曜日だ。もっと混んでいる状況を想像していたので、多少拍子抜けした感がある。
まずは、とりあえず何か乗り物に乗ることにする。空いている乗り物を求めて、しばらくディズニーランド内をさまよい歩く。寒さは悲鳴をあげるほどではないが、雨がさまよい歩く身に冷たく染みてくる。うう。

結局どの乗り物も30分以上の待ち時間が必要だったため、イッツ・ア・スモールワールドファストパスを取得し、先に食事をすることにした。ちなみにファストパスって、指定された時間内に行けば、その乗り物に普段よりも短い待ち時間で乗れますよ、という優先チケットのようなものだ。ムーミン好きだが、ディズニーにせっかく行くなら、と、前準備は一応していくのだった。

昼はハングリーベア・レストランでとることにした。はらぺこ熊のレストラン。熊だベアー。まあ、カレー屋だ。
実は、おれ、ここのカレーが好きなのだ。
この日は、レジの奥でカレーを作っている人が、レトルトの袋をぞんざいにゴミ袋に捨てている姿を目撃してしまったのだけど、それでもカレーはいつものおれの好きなカレーだった。よかったね。
ただ、この日のハングリーベア・レストランはいつもと少し様相が違った。昼時とはいえ尋常でないほど混んでいる。注文カウンターにたどり着くまで30分待ちだ。しかも、カレーを無事に受け取ったとしても、更にそこから席が空くまで待たなければならない。他の食事場所と比べて、割と空いている印象があったので、カレーで30分以上待ちは予想外だった。ディズニーランド内に入ったときに人が少なく感じたのは、単に、寒い外から温かい屋内へ人がみんな集まってしまっていたから。ただそれだけのことだったのだ。
カレーの列に並んでいる間、室内での食事を諦めた家族が外に出てくるのを見た。カレーの乗ったトレーを持ち、外に置いてあるテーブルにつく。10度弱の気温で、しかも雨の外だ。ジャンバーを着て、体を縮こませて、家族全員でカレーを会話なく黙々と食べる姿は、配給された食糧を食べている避難民を思わせた。雨のカレー屋に魔法はかかっていないようだった。

カレーを済ませ、ファストパスをとったイッツ・ア・スモールワールドをはじめとして、いくつか乗り物に乗っていった。ちなみに人気の乗り物のプーさんのハニーハント、バズのアストロブラスターは到着時点で既にファストパスもなくなっていたので諦めました。

イッツ・ア・スモールワールド
世界各地のそれぞれのイメージの衣装を着た人形たちが歌って踊る。それを見てまわる乗り物。ちょうどクリスマス期間の限定バージョンだった。屋内なので温かく、乗っている人は平和そうな感じだ。魔法はちゃんとかかっている印象。
白雪姫と七人のこびと
白雪毒りんご姫の話を見て回る乗り物。待っている間、隣に並んでいる小学生くらいの女の子たちが「これ、すぐ終わるんだよね」と言ったのが聞こえた。思わず「え、そうなの?」とその女の子に聞きそうになってしまったよ。実際に乗ってみると、その女の子の言うとおり、本当にすぐに終わった。体感だが1分くらいしか乗ってなかったんじゃないか。外で待ってる間は寒く、乗っている時間が短かったため、やや魔法は弱い。
・空とぶダンボ(見てただけ)
ダンボ型の乗り物に乗り、ぐるんぐるんと空を飛ぶ乗り物だ。カッパやジャンバーを着込んだ人たちがこれに乗ってぐるんぐるん回されている。何かの罰のようにしか見えない。飛行象寒中市中さらしの刑か。彼らはいったい何をしてしまって、飛行象に乗るはめになってしまったのだろうか。
ウエスタンリバー鉄道
蒸気機関車。おれ電車好き、ダカラ、コレ好キ。なんでカタコトなんだ。案内するお兄さんのにこやかな「雨で濡れてしまうことがありますのでご了承ください」の一言がいい。そう、電車とはいえ箱状ではなく屋根はあるがオープンなつくりなのだ。なので雨だと濡れる。問題は今日の雨、傘がない、君に逢いに行かなくちゃ。外なので寒いものは寒い。
ジャングルクルーズ
船、というかボートのようなもので密林の河を藤岡弘ばりに行く。ウエスタンリバー同様「濡れてしまうことがありますので、風邪をひかないようにしてください」の先導役のお兄さんのにこやかな一言がよい。お兄さんのトークに反応してずっと笑ってたおばさんが同じ船に乗っていたのだが、半分はそのおばさんの笑い声で楽しかったのかもしれない。ガイドがいる乗り物は、案内するお兄さんやお姉さんのキャラクターによっても楽しさが変わってくるなあ。ただやはり、藤岡弘でも寒いものは寒い。
ミッキーマウス・レビュー(調整中)
ディズニーのキャラのからくり人形が歌に合わせて動くのを見る小屋。寒さをしのぐのにはいいかな、と思って行ってみたのだが「調整中のため休み」の貼り紙が。ミッキーマウス・レビューの建物の軒先には、同じように雨をしのぐためにたくさんの人が集まっていた。中にはカッパやジャンバーにくるまってうずくまったり、横になっている人たちもいたりして、さながら難民避難所のようになっていた。魔法は全くかかっていない。この様子をテレビのコマーシャルで使ったらきっと募金や毛布の寄付が集まってしまうと思う。
カリブの海賊
海賊船に乗って呉軍に攻め込む乗り物。じゃないよ、三國志かよ。海賊の洞窟をまわる乗り物だ。ここは建物内で待てるので、寒さはない。したがって並んでいる人たちにそれほど悲壮感はなく、まあ、魔法はかかっていた。ちなみにカリブの海賊の一番前の列に座れました。ぼくはうれしかったしたのしかったです。なんでしょうがくせいのさくぶんみたいになるんだ。

そんな感じだ。
屋外の乗り物に乗っているときと、外で待っている間は寒く、ところどころで寒さに苦しむ民衆の姿も見かけられ、夢と魔法はあまり効いているとは言いがたい状況だった。
そういえば、いつもはディズニーランド内を練り歩いているキャラクターたちも、この日はあまり見かけなかったな。苦しむ民衆にすがられ、糾弾されるのを恐れたのだろうか。
「民衆にパンと毛布を」
「パンがなければお菓子をお食べ」
ああ、寒くて雨の日には民衆の声は届かないのじゃ、と村の長老の嘆きの声が聞こえてきそうな、そんなディズニーランドでした。

行くなら晴れた日にまた行ってみたいものだ。今度はたー坊にも会いたいぞ。あ、たー坊はディズニーシーにしかいないんだっけか。ん、どっちにもいないのか、そうか。